あごの骨が成長しすぎた下顎前突の治療には、あぎ」の骨の手術が必要になる場合が多いのですが、当然その手術は身長の伸びが止まるのを待たなければなりません。
女性では十七歳以後、男性は十九歳以後の方が安全です。
安全というのは、手術が危険という意味ではなく、あごの成長力が残っていれば、また再発してくる可能性があることをいうのです。
だから、成長期には「外科矯正」はできないのです。
上下の歯が離れたままでいる状態は、理由がはっきりしている場合は別として、私たちにも、本当の原因は分かっていません。
さて、開噛にも程度があって、ほんの数本の歯が上下噛み合わないものから、一番後の臼歯だて、普通は仲良く噛み合っているものです。
上下の歯の一方が抜けるとその相手の歯がなくなったため、その向かい合った歯はどんどん生えつづけてきます。
ところが開噛の場合は、肝心の相手の歯が生えてくれないために、噛み合わないのです。
大臼歯だけが噛みあって、前歯や側方の歯が噛み合っていない。
上下のあごの成長の異常、栂指吸引や舌の習癖などによるものがある。
前の方の歯が全然噛めないというような現象です。
普通ならおこりえないことなのです。
向い合う上下の歯には面白い性質があっていて、残った歯が全く噛めない人も決して少なくありません。
それも私たち矯正専門医が指摘して初めて気がつく例が結構あるのです。
原因のうち簡単なものは、「挿舌癖」といって舌が邪魔をしている場合です。
上下の前歯の間に常時舌の先端がでていることがあります。
幼児性の挿舌癖は、小学校低学年までは良く見られ、おしゃべりをしている場合でも舌の先(舌尖)は、上下の前歯の間に見えかくれします。
舌のような柔らかいものでも、いつも歯の間にでていれば歯が生えるのも邪魔されます。
舌が上下の歯の間に出ないような装置を使えば、歯は思いだしたように生えはじめます。
挿舌癖以外のものには、あごの成長や変形によるものなどがありますが、治療はあまり簡単とはいえません。
前歯ではなくて、前歯の裏の歯肉を噛んでしまうことがあります。
放っておけば、長い間に歯肉を痛め上の前歯は徐々に出歯になっていきます。
や交通事故などの後遺症も含まれます。
上あごよりも下あごに異常は多いようです。
骨の異常であるため、外科手術が必要になりますが、手術に先立って矯正歯科と口腔外科の専門医による対診(専門医どうしで相談すること)が大事です。
「顎変形症」の場合でも、変形したあごのために不自然な噛み合わせをしていることがほとんどなので、あごの手術だけでは噛み合わせがかえっておかしくなることが多いので、必ず矯正専門医との事前の相談と矯正治療が必要で、こうした手術前の矯正治療を「術前矯正」といいます。
大学のような特定の医療機関で、健康保険の適用を受けることができるようになりました。
これで、「術前矯正」「あご切りの手術」「術後矯正」が、特別の条件下ですが健康保険に認められたことになります。
いずれそのうちに、大学以外の特定の指定医(開業医を含む)にまで拡大されれば、全国どこでも保険で見てもらえるようになるでしょう。
口の中に一番初めに生えてきた第一大臼歯が、前の方にズレテしまえば、そのあとから生えてくる切歯、犬歯、小臼歯には生える場所が足りなくなって、パニックをおこします。
上あごの八重歯の原因の殆どがこれです。
乳歯をムシ歯にさせないで欲しい、と私たちがお願いするのもそのためです。
ムシ歯の乳歯の根っこの一部が何時までも残り、後から生えてくる永久歯の道を妨害したりもします。
乳歯、特に奥の乳臼歯がムシ歯になって、歯の頭(歯冠)の一部が欠けたりすると、乳歯列の後ろに生える第一大臼歯は、ムシ歯でできたスペースを埋めるため、たちまち前の方に倒れてきます。
私の学生時代ですからずいぶん前のことですが、通学電車の中でも指を吸っている小学生が定期券とゴム乳首を首から左右にぶら下げた幼稚園の子供を見かけたものです。
最近はそうした子供はほとんどいません。
私の同級生にO博士(東京・新宿区開業。K日本部会会長)がいます。
先生は人も知る日本の小児歯科学のパイオニアです。
小児歯科専門で開業の第一号です。
先生が開業以来二十五年間、私は矯正部のパートナーとしてお互いに専門家の立場でアドバイスをしあっています。
小児歯科にとっては矯正歯科医の意見が、矯正歯科にとっては小児歯科医の意見が非常に大事です。
その点私は、強力な味方がいるので幸せだと思っております。
永久歯列でも同じで、ムシ歯などで大人の歯が早く抜けてしまえば、前後の歯が倒れだしたり、上か下の対合が伸びてきたり、それだけで歯並びは悪くなります。
何時までゴム乳首を吸うのも、歯並びを悪くします。
指しゃぶりも同じで、一番問題になるのは親指(栂指)を吸う癖です。
なぜ子供たちはこの親指を吸うのでしょうか。
本当のところはわかりません。
お母さんのおなかの中の胎児が、すでに指を吸っていることも証明されているくらいです。
母親の制限授乳に抵抗した欲求不満(プラストレーション)解消のためだ、という意見もありますが、たぶん唇はものが触れると何でも吸うように本能的に仕組まれているからとも考えられています。
生まれてすぐお母さんの乳首に吸いつかなければ、赤ちゃんは死んでしまうからです。
唇にふれたものは何でも吸っちゃおうというのでしょうか。
でも、もしこの本能がなかったら、赤ちゃんはすべて死から逃れられないでしょう。
さて、この指を吸う癖ですが、赤ちゃんの時は仕方ないとして、五、六歳になってもまだそれがとれなければ、やめさせる工夫が必要です。
なぜかといえば、この癖のために上のあごが前に突き出てしまうからです。
そればかりではなく歯も前に出てしまいます。
一方、下あごは親指のテコの作用で後下方に押し下げられるのです。
おまけに、指の太さの分だけ上下の歯の間にスペースがあいてしまいます。
四、五歳程度でやめれば、悪くなっていた歯並びも余程のことがないかぎり自然に治ります。
どうしても、自分でやめそうもない時は、矯正歯科専門医か小児歯科医に相談して下さい。
治さなければあごの形にも影響し、大人の歯並びになっても問題は残ります。
にがいキニーネを指にぬったり、針金でカゴのようなものをその指にはめたりした時代もありますが、いまではうすい入れ歯に針金の柵がついた「クリブ装置」でその癖を治します。
ただ、癖というのは、「なくて七癖」というように、どなたにも何かあるはずです。
思い当たることと思いますが、「無意識で、かつ反復する」ものです。
意識してやれば演技、年に一回では癖にはなりません。
この無意識・反復の二条件のひとつでも崩れると、癖は成立しません。
クリプ装置を入れることは、指の力をこれで防ごうというのではないのです。
クリブは針金を曲げて作った柵です。
このクリブをいわば発信装置として、「今、口に指を入れているよ」ということを教えることに役立たせるのです。
つまりこれで、無意識に指を吸っていることを「意識化」させる信号機の役目を持っているのです。
テレビを見るときに「ほお杖」をつく癖のため、あごが曲がってきたという人もいます。
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